【古典文法】助動詞その参【む、べし】

 こんばんは、しめじです。

 前回は、助動詞を六つまとめて紹介しました。

 過去の「き、けり」。
 完了の「つ、ぬ」。
 存続の「たり、り」。

 ちょっといきなり六つは大盛過ぎたかもしれませんが、多分一括りにしてイメージしたほうが理解しやすい、おぼえやすいかなあと思ったのでまとめて紹介しました。
 一日では辛い…という場合はちょっと小分けにして覚えていけばいいと思います。

 さて、今夜は二つ紹介します。

 これもおおむねセットで学ぶことの多い助動詞です。
 意味が結構かぶっている部分もありますので。

 ただ、これがかなりの曲者。
 高校で「古典が苦手ー」という人は、結構この助動詞で蹴っ躓いた人が多い印象です。

 一応複数回 に分けて話をしようと思いますので、今夜はゆっくり行きましょう。

いつも通りの活用表。

 もう見ただけで眩暈を起こしそうな表ですね。少しずつやっていきましょう。

助動詞「む」の活用

 活用は四段活用型「ま、み、む、む、め、め」ですが、未然形、連用形、命令形は用法が見つかっていないので、おぼえるのは「む、む、め」だけで結構です。

助動詞「む」の用法

 用法から先に話しましょう。この六つが主な意味です。
 そのなかでも、「推量、意志、適当」が特に多い、かつちゃんと訳をしないといけない用法です。

 全て、「これから先にそうなるであろう、そうするであろうこと」を示すニュアンスの用法です。

 例えば、自分がこれからそうするであろうことなら、「自分は○○しよう」という意味ですので、「意志」となります。
 相手に対して、あなたはこれからそうすることになるだろう、ということなら、「あなたは○○したほうがよい」という意味で「適当」になります。
(相手に対して「○○した方がいいよ」と言っているということは、何かを促す、あるいは誘っているわけですから、これを別に「勧誘」という用法として扱う場合もあります)
 後は、他者がこれからそうするであろう、そうなるであろう、ということであれば、そのまま「それは○○だろう」という「推量」になります。

 婉曲(えんきょく)や仮定も、「断定的な表現を避けている、そうなったこと、そうしたことが確定しない」という点では共通点があるかと思います。
(ちなみに、婉曲というのは、日本語によくある遠回しな言い方、です。訳すときは多くは「~ような」となります。比喩とは別です。用例としては、「どんな本を読むの?」「ミステリーのようなのとか、ホラーのようなのとかです」という会話の、「~のような」や「~とか」が婉曲にあたるかと思います)

 ちなみに、よくある語呂合わせとして、

「西瓜固え(すいかかてえ) 推量、意志、可能、仮定、適当、婉曲」
「西瓜替えて(すいかかえて) 推量、意志、可能、仮定、婉曲、適当」

 なんかがあげられます。覚えやすいもので覚えましょう。

助動詞「む」の接続

 したがって、この「む」という助動詞は、未然形に接続します。

 なぜなら、この助動詞が持つ意味として、その出来事はまだ起きていないからです。

 まだやっていないことを、これからやるから「意志」
 まだやっていないことを、やるように促すから「勧誘、適当」
 これからそうなるだろうから、「推量」
 です。

助動詞「べし」の活用

 これは、ク活用形容詞と同じ活用になります。
 ところどころ抜けがありますが、それはその活用の用例が基本的には無いからだと思ってください。
(用法に命令があるのに命令形が無いってなんだか変ですね)

 上の段の本活用型と、下の段の補助活用型の使い分けは、基本前回までと同じです。「べく+あり」が約まったものですので、補助活用型の方はその後に原則助動詞が続きます。

助動詞「べし」の用法

 今度は、「む」とくらべた時に、「そうなることが相当確かである」というニュアンスが強くなります。
 まだそうなっていないから断言はできないが、まずそうなると考えていいだろう、という感じです。

 ですので、自分がそうするつもりなら「意志」。そうする、そうなるということは、それができるということなので「可能」になります。
 相手にそうすることを求めるので「命令、適当」(さっきの「む」が勧誘と適当だったことを考えると、かなり強くなりますね)
 後は、まず間違いなくそうなるだろう、ということで「推量、当然」となります。

 割と、今の私たちの「~べきだ」とニュアンスは変わりません。これは結構そのままのニュアンスが今も残っている言葉だと思います。
 古典の試験で本文を読んでいる時に「べし」が出てくると、どの意味なのか結構判断に悩みます(私でも結構悩むときがあります)。
 そういう時は、とりあえず「べき」と訳して読み進めてしまって、問題で聞かれた時だけどの用法か考える、というくらいでも問題ありません。

 ちなみに、「む」とよく似た語呂合わせがあります。

「西瓜止めて(すいかとめて)」推量、意志、可能、当然、命令、適当の頭文字。

 まあ、西瓜が転がっていったので助けを求めているイメージなんですかね。

助動詞「べし」の接続

 大変申し訳ないのですが、私も理由はよくわかっていません。

 とりあえず、終止形に接続します。

 語源として最も有力なのは、「宜べし(うべし)」の「う」が無くなった、というもの。
「宜べし」は、「いかにも、なるほどたしかに」というような意味の副詞です。なるほどたしかに「べし」の用法に通じるものがありますね。
 「うべ」はその後「むべ」と書かれるようになりました。今の日本語にも「むべなるかな」という言い方がありますが、その「むべ」でもあります。

用法と訳の対応について

 最後に、各用法とその訳の対応について書いておこうと思います。
 ただし、これについては、各自自分の持っている文法書などをきちんと見ることをお勧めします。

推量「~だろう(雨が降るだろう)」「~そうだ(雨が降りそうだ)」
意志「~しよう(今日は早く寝よう)」「~つもりだ(早く寝るつもりだ)」
可能「~できる」
適当「~のがよい(今日は早く寝るのがよい)」
当然「~はずだ(今日は早く寝るはずだ)」「~にちがいない」
命令「~しなさい」「~しなければならない」
婉曲「~のような(無理に訳す必要はない)」

 だいたい、こんなところだろうと思います。

 以上、助動詞「む」「べし」の接続や用法、活用の話でした。
 次回は、これらの訳し方や、どの用法なのかの見分け方などについてお話しします。

 では、今夜はこの辺で。

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