こんばんは。しめじです。
昨夜から、具体的な助動詞のお話をはじめました。
高校生のみなさんは実際の教科書を開いて、どこにその助動詞があるか探してみてください。
多分、その方が勉強になると思います。
高校の教科書が手元にない方は、なにか古典作品をひとつ用意してください。著作権はありませんので、ネットで検索すればいろいろ出てきます。
せっかくなら、一番読んでみたいものから読んでみてください。
もちろん、作品によって難度の差はあります(例えば、源氏物語はかなり難しいです)。
でも、読みたい! と思っているものじゃないとモチベーション続きませんからね。好きなものを手元に置くのが一番です。
さて、今夜は、登場頻度の大変高い助動詞六つを、まとめて紹介したいと思います。
数が多いから大出しするのではなく、単に似たような意味の助動詞のグループだ、ということです。
目次
では、活用表から。
過去の助動詞「き」「けり」
何が違うの?
活用について。
完了の助動詞「つ」「ぬ」
活用と接続について。
存続の助動詞「たり」「り」
活用と接続について。
これらの助動詞がセットで出てきた時の訳し方。
では、活用表から。
大事なことですが、上の五つはいずれも連用形に接続します。
なぜそろいもそろって連用形につながるのか、というのも、ちゃんとわかりやすい理由があるので安心してください。あとで説明します。
一番下の「り」だけかなり曲者ですので、これについては後に書きます。
過去の助動詞「き」「けり」
この二つは、一般的に過去の助動詞と呼ばれます。
訳は「〜た」です。
英語の過去形なんかもこうやって訳すと思いますが、それと同じです。
あとは、「けり」には「詠嘆」という働きもあります。
「夕焼けがきれいだったなあ」の「たなあ」の部分ですね。
過去の助動詞「き」「けり」:何が違うの?
えーと。
訳にすると、どっちも「〜た」になってしまいます。
しかも、後述しますが、「今の日本語には時制(過去とか未来とか現在とかの、時間を表す要素)が無い」とまでする立場も存在しています(少数派で、一般的には支持されていない考え方ですが、個人的には結構ピンとくる主張です。例えば、次のところでも書きますが、「おやつを食べたら宿題をしよう」というときの「た」は、過去のことを指していません。おやつを食べる、という行動が終わったら、という意味を示しています。であるので、日本語の「た」は、時間がどーとかこーとか言っているのではなく、それが終わったかどうかをしめしているのだ、という考え方です)
話をもどすと、
「き」…直接過去。直接体験した出来事を指す。
「けり」…間接過去。自身の直接の体験、経験ではないものを指す。例えば、話の登場人物の行動など。
と説明されることが多いですが、別に意識しなくても問題なく読めます。しかも、この分け方に当てはまらない用例が結構たくさんあります。
なので、とりあえず、どっちも「過去」と覚えておいてもらって結構です。
過去の助動詞「き」「けり」:活用について。
「き」はかなり特殊な形をしています。
特殊というか、全く不規則です。
これはもう何度も口に出して覚えてください。
強いて語呂合わせをするなら、存在しないとされる連用形と命令形の○を「まる」と読んで、
迫る騎士、鹿丸(せまるきし、しかまる)
とかどうでしょうか。
覚えやすいなと思ったらぜひ採用してください。
「けり」は、「き+あり」が約まったものと考えられていますので、もう何度も出てきましたが、動詞「あり」と同じくラ行変格活用型です。
ちなみに、どちらも連用形の用例が見つかっていません。
命令形も見つかっていません。ただ、命令形がないのは理屈で考えれば当たり前かな、という感じがします。過去のことは命令しようがないので。
完了の助動詞「つ」「ぬ」
この二つは、「完了」の助動詞と言います。
完了って聞くと、英語の完了形がチラついて拒絶反応を起こす人もいそうですが、日本語の完了形はめちゃくちゃ簡単です。
(英語の完了形も、理屈がわかればそんなに難しくはないですよ)
訳は「〜た」です。(「〜しまう、~しまった」と訳してもOK)
過去と一緒やん! と思うかもしれませんが、一緒です。
たとえば、
「たけし! おやつ食べたら勉強しなさいよ!」
の、「た」。これ、過去のことじゃないですよね。
おやつはこれから食べるか、今食べているかのいずれかです。
でも、「た」を使います。
今の日本語の「た」は、「その動作、出来事、行為が終わっている」ことを示す意味が大変強い単語です。
これを、「完了」と言います。(あとは、特に訳さない「強意」という働きもあります。他にもいくつかありますが、まずは完了と強意を覚えれば十分です)
(繰り返しになりますが、今の日本語には時制が無い、という主張も、この「た」の働きによる部分が大きいです。単に終わっていることは過去の出来事であることが多いだけであって、過去を表しているわけでは無いのだ、という考えだそうです)
完了の助動詞「つ」「ぬ」:活用と接続について
「つ」は下二段型、「ぬ」はナ変型で、連用形に接続します。
理由は簡単で、どちらももともと動詞だからです。
「つ」は、「棄つ(うつ)」の「う」が消えたもの、「ぬ」は、「去ぬ(いぬ)」の「い」が消えたものだと考えられています。
動詞が元になっているので、当然のことながら連用形に接続します。
「棄つ」は、字の通り「すてる、さらせる」ですので、その動作、出来事を終わらせて捨てる、去らせるイメージですね。
で、「棄つ」はタ行下二段活用動詞ですから、助動詞の「つ」もタ行下二段活用の形をしていますね。
「去ぬ」は、その出来事が終わって去っていくイメージです。
また、以前、動詞の活用のところでも話しましたが、「去ぬ」は二つしかないナ行変変格活用の動詞の片方。ですから、助動詞「ぬ」もナ行変格活用とおんなじ形になります。
従って、この二つの助動詞は、
自分の意思で終わらせたものごと…つ
自分の意思とは関係ないところで終わったものごと…ぬ
という使い分けが概ね成立しています(この通りではない用例ももちろんありますが)。
ただ、これも過去の助動詞同様、違いを意識する必要はあまりないですし、訳はどちらも「〜た」「〜しまう」で結構です。
存続の助動詞「たり」「り」
この二つは、存続という用法に分類されます。ただ、文脈上「完了」だと判断される場合もあります。ただ、基本的には先に「存続かな?」と考えて構わないと思います。
「存続」は、その動作、出来事、状態が続いていることを指します。
従って、訳は「〜てある、〜ている」になります。
英語の現在進行形の訳がイメージとしては近いと思います。
存続の助動詞「たり」「り」:活用と接続について
どちらも、ラ変と同じです。
「り」は、動詞「あり」の「り」だけが残ったもの、また、「たり」は、「て+あり」が約まったものと考えられています。
この「て」は、さっき紹介した助動詞の「て」です。
と考えると、活用がラ変型であることも簡単に理解できますし、「たり」が連用形に接続するのも納得できますね。(用言の活用の練習問題1回目の解答編をご覧ください)
厄介なのは「り」の接続です。こいつは訳がわかりません。
学校文法では、
サ変の未然形(せ)と、四段の已然形もしくは命令形(e)に接続する。
と説明しています。
已然形としているのか、命令形としているのかは、辞書などによって変わってきます。えーと、この理由は奈良時代ごろの仮名遣いの話にまで遡るので省きます。
これはなんでこんな接続になるのか、私もまだ知らないので、理由をかけません。申し訳ないです。
覚えにくいなあと思う人は、「さみしい(サ未四已)」と覚えておきましょう。
これらの助動詞がセットで出てきたときの訳し方
最後に、これらの助動詞は、セットになって出てくることがあります。
教科書が手元にある人は、ないか探してみてください。
よく見かける組み合わせと、よく行われる訳し方を紹介しておきます。
(もちろん、常にこうだ、というわけではありませんが)
にけり(完了+過去) 〜た。〜しまった。
てけり(完了+過去) 〜た。〜しまった。
にたり(完了+存続) 〜しまっている。
となることが多いです。
よかったら参考にしてください。
では、長くなりましたが、今夜はこの辺で。